まるで冴えないモブ男子の僕の武器は超絶のイケボらしいです

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*****  たしかにあたしはおまえを裏切るような真似をした。  僕自身、そんな気持ちに駆られてはいるのだけれど、どうあれそこにあるのは平野さんの自由で……。  平野さんはベッドのふちに腰掛けていて、僕はカーペットの上で――失礼ながらもあぐらをかいている。 「おまえ、助けてくれたじゃんか。連中は近所でも有名なアホ高校の生徒なのに。すげー勇気だなって思った。カッコいいとすら思ったよ」 「えっと」 「なんだ?」 「誰でも同じような行動をとったと思うよ? 違うかな?」 「誰で持ってんなら、あたしの恋人とされたあのアホはどうしてとんずらこいたんだ?」 「それは……」  僕は苦笑を浮かべ、俯き加減で、右手で頭を掻いた。 「決めた」 「なな、なにをだい?」 「あたし、あんたの恋人になってやっから」  当然僕は「えっ!」と驚きに満ちた声を発したわけだ。 「だだっ、ダメだよ。僕の恋人なんて、ダメだよ」 「デブチンよ、おまえはどうしてそんなふうに言うんだ?」 「それは一般常識じゃないか」  平野さんは尊いまでに微笑んで――。 「自慢しろよ、おまえ。あたしみたいな美少女をカノジョにできたってんだから、大いに自慢しろ」 「えっ、えーっ」 「おまえはヒーローだよ」 「えっ」 「おまえには勇気がある。カッコいいよ」 「そんなの錯覚じゃあ……」 「るせーっ! テメーはカッコいいんだよ!!」  言われて悪い気はしなかった。  だけどどうしたって弱気の虫が顔を覗かせる。 「だけどセックスはダメだ。まだダメだっ!」平野さんは笑った。「でも、現段階でも、髪に触るくらいは許してやるぜ」  平野さんが抱きついてきた。  耳元で「いつかイイ感じで抱いてくれよな、ルルーシュ」と囁いた。 「あいにくですけれど、僕はルルーシュではないですよ」 「ああ、そうだな、そうだった。おまえはデブでブサイクのタナベだ」  酷い言い方だ。  だけど微笑みの気配ばかりが込み上げてきて、苛立ちは覚えなかった。
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