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平野さん、相変わらずのベッドの上。
「あの――」
「んだよ、バカタナベ、タナベバカ」
「い、いや、だからもう帰ったほうがいいんじゃないかなって――」
「やだよ、バカ。あたしはあたしのタイミングで帰るんだよ、バカ。だからあたしの行動に口出すのはよせ、バカ。つーかどう考えたってあたしのような女神様がいてやってんだから、それはもう多大なる目の保養になってんだろうが、バカ」
「そっ、そんなことは――」
「とか言いながらやっぱあたしのパンツ凝視じゃんか」
平野さんはうつ伏せで足をぷらぷらさせながらマンガを読んでいるので、それはまあ、本来見えてはいけない「部位」が見えているわけだけれど……。
平野さんが起き上がった――ベッドから下り、僕の目の前に立った。ふざけるようにして笑みを作り、それなりに背の高い僕のことを見上げながら、その大きな胸を両腕で抱き抱えるようにして強調して見せた。平野さんは学校の制服姿であるわけなのだけれど、どうあれ露出過多の服装は正されるべきではあるまいか。卑猥。なんと非日常的な単語だろうか。
にひひ。
そんなふうに、平野さんは笑った。
「なあ、触りてーんだろ、おっぱい。触りたいよなぁ?」
「いい、いや、僕はそんな――」
「エロいことしたくないってんなら、どうしてあたしを部屋に入れてんの?」
「それは平野さんが勝手に押し掛けてくるから――」
「嫌なら追い出しゃいいじゃん」
「それはそうなんですけれど……」
平野さんはハーフらしく、顔立ちは日本人のそれなのだけれど、大きな瞳はとことんまで抜けるようなブルーだ、深くクリアに澄んでいる。
「決めたぜ、でぶちん。今日はここに泊まることにするぜ」
「えぇぇーっ」
「だいじょーぶ。女友達の家に泊まるっつえば問題なっしん」
「えぇーっ」
「しつけーな、馬鹿野郎。諦めろし」
その夜、僕は僕のシングルベッドで平野さんと並んで横たわった。
ろくに寝付けなかったのは、言うまでもない。
女性の――否、平野さんの甘い香りはこの上なく殺人的だ。
これっきりにしてほしい。
色仕掛けとかはもうやめてもらいたい。
デブでブサイクで根暗でも、どきどきくらいはするのだから。
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