パーティーから追放された最強壁職、黒ギャル魔法使いとペアを組む

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*****  表通りには、やってやろうというパーティーがもう五組も集まっていて、その中にはぼくを追放したヒーラーのアシュリーもいた。彼女はぼくの顔をみつけると、嘲るような表情を浮かべた。  数の多さを見て分が悪いと思ったのか、五メートル級の四つ足のドラゴンは身を翻すと一目散に逃げ出した。ここぞとばかりにみなが追いかける。ぼくたちはとりあえず待機。誰かが狩ればそれでいいと考えているから。ドラゴンはすでにひとを手にかけたのだ。狩ったパーティーは国から相当な報酬が得られることだろう。表彰されるという名誉にあずかることもできるかもしれない。金と名声。どちらもひとが欲しがるものだ。  ――ドラゴンの罠だった。  退くと見せかけておいて、素早くこちらに振り返った。向こうまでずっと続く道――一本道に集まったパーティーに向けて大きく口を開けてみせ――。  怒りの咆哮――灼熱の炎を、ドラゴンは吐き出した、轟音。  避難しようとしているひとまで、炎はあっという間に飲み込んだのだった。  炎はぼくらのところにまで達した。ぼくは大きな鋼の盾でそれを遮り、身を挺してメグをかばった。もう付き合いの長い盾だけれど、耐えてくれた。平均より少しいい物を買ったんだったなと思い出した。  命からがら引き返してくる中には、アシュリーのパーティーもあった。みっともない悲鳴を上げて、どたどたと走ってくる。彼らの行く手をメグが両手を広げて通せんぼした。「逃げるなよ! 戦えよ!」と叫ぶ。ディフェンダーであろう青い服の若い男に「勝ち戦しかやらねーよ!」と叫び返される。  メグは「なっさけねーの! あたしの壁はあんたたちなんかよりずっと勇敢だ!」と言うとげらげら笑った。「な、なによ! プルートなんて身体が大きくて頑丈なだけですわ!」と応じたのはアシュリーだ。 「身体が大きいのも頑丈なのも立派な才能じゃん。心が強ければなおいいじゃん。おねえさんはプルートと知り合いみたいだけど、男を見る目はないみたいだね。ご愁傷さま。はっきり言って、ざまぁだわ」 「ぐっ、ぐぐぐっ……」 「ウチらはやるよ。負け戦だってかまうもんか。プルート、そうでしょ?」  ぼくは駆け出すことを答えとした。  すぐについてきてくれる相棒のなんと頼もしいことか。  見るからに強靭そうなごつごつとした黒い身体。  後肢だけで立ち、前肢もそれなりに太い。  そんなドラゴンがこちらを向いた。  がなりながら突っ込んでくる。  ぶつかり合うべくぼくは走る。 「プルート! どうすればいい?」 「いつもと同じ! ぼくが引きつけるから、鎌で首を落として!」 「できるかな?」 「メグならできるよ!」 「わかった!」  重い装備もなんのその。ぼくは駆けに駆けてジャンプ一番、どてっぱらに斬り込んだ。硬い皮膚の前では剣撃なんて意味を成さないことはわかっている。案の定、まるで歯が立たない。ターゲットになるだけでよかった。剣を捨てる。ドラゴンが右の前足を使って、爪の一撃を浴びせてきた。上にかざした盾で受ける。足を踏ん張る。地面がへこむ。それでもぼくは態勢を崩さない。「いまだ!」と叫ぶまでもなく、後ろのメグが太い首を落とすべく黒くて大きな鎌を発生させた――はずだ。角度的に確認できない。盾が軋む。長い尻尾による一撃を右方からもろにもらい、ぶっ飛ばされた。住宅の壁に激突したところでようやく止まった。すぐに駆け出す。ぼくに向けて大きく口を開けているのが見えた。  しかし、ドラゴンが炎を吐くより早く――。  メグはいままで見たこともないほどの巨大な鎌を生成し――。  その大鎌は至極冷たく残酷に、獲物の首をすぅっと刈り取って――。  勝利の瞬間をしっかりと見届けたぼくは、気を失って前に倒れ込む直前に、自分の気持ちに正直になろうと決めた。
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