パーティーから追放された最強壁職、黒ギャル魔法使いとペアを組む

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*****  翌日から、ぼくはギルドに顔を出すようになった。ギルドとは各職がパーティーや相棒を求めて集う場だ。必要性という点において手を取り合うことができれば、これから仲良くやっていきましょうという話になる。ギルドではいろいろな依頼主から寄せられたさまざまなクエストを引き受けることもできる。目的を達成したあかつきには報酬として金銭を受け取ることができるわけだ。  予想はしていた。けれどそれにも増して、壁職は飽和していた。広いギルドのフロアの中で声をかけられるのを待っているのは同業の連中ばかりだった。ヒーラーにしろ、ディフェンダーにしろ、マジシャンにしろ、魔法を使うには生まれついての才能が必要だ。だから彼らは当然、重宝される。壁職は違う。なろうと思えば誰でもなれる。基本、一番前に出て、敵の意識を自らに集中させるだけでよいのだから。身体が頑強でありさえすれば無難にこなせてしまう。それは変えようのない事実だ。  その日も丸椅子に座り、壁に背を預けてしきりにため息をついていると、知った顔が近づいてきた。マイルズさんだ。頭をきれいに丸めていて、トレードマークは立派なひげ。見るからに屈強そうな身体つきは、ぼくの巨体と比べても引けを取らない。  マイルズさんはぼくの隣の椅子に腰を下ろした。  ぼくと一緒にため息をついた。 「そうか、プルート坊や。おまえさんもついに追放か」 「マイルズさんも、お気の毒です」 「俺はいいのさ。もうずいぶんと年だからな。おまえはまだ若い。やりきれんなぁ」  ぼくの目にはじわりと涙が浮かぶ。  追放されて以来、弱気の虫を飼っている。 「いったい、なにが悪いんでしょうか」 「取って代わられちまったわけだが、ディフェンダーのみなさんは悪くない。奴さんらは奴さんらで、新たな魔法を習得するために努力したわけだからな」  またため息が漏れた。 「薬が買えなくなってしまったら、どうしよう……」 「おふくろさん、まだ悪いのか?」 「よくなる見込みはないから、薬を飲み続けるしかないんです」 「昨今、薬は安くないからなあ」 「ヒーラーは、どうして病気は治せないんだろう」 「なんでもできちまったら、神さまなんて要らなくなっちまうだろうが」  マイルズさんが口にしたことはよくわからないけれど、よくわかるような気もした。
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