パーティーから追放された最強壁職、黒ギャル魔法使いとペアを組む

3/12
前へ
/12ページ
次へ
 不意にピュゥと茶化すような口笛が聞こえた。なんだろうと思い、俯けていた顔を上げる。つば広の黒いとんがり帽子をかぶった女性――女のコが、開け放たれている両開きの戸――出入り口付近に立っている。遠目にも細い肩を怒らせているのがわかる。ギルドの業務の受付窓口を担っているでっぷりと太ったおばさん――ちょっとやそっとのことでは動じないセイラさんのところに行くと、なにやらぎゃんぎゃん吼え立てる。女のコは露出過多のファッションで、スカートも短い。だから後ろからその中を覗き込もうとする不埒な輩が湧いたのだけれど、そしたら女のコはその男の顔面を右足で蹴飛ばした。なんと勇ましいことだろうか。――違う。覗かれたくなければ、短いスカートなんてはかなければいいのだ。  女のコがバンバンバンッとカウンターを叩く。セイラさんにメチャクチャ文句を言い、その内容も聞こえてくる。ギルドで出会った人間とパーティーを組んだのだけれどちっとも楽しくなかったとか、そんな話だ。クレームを入れる相手を著しく間違っているけれど、一緒にいて楽しい楽しくないで仲間を語れるあたりに、ぼくは羨ましさを覚えた。  女のコはセイラさんに、ある質問をぶつけた。その結果として、セイラさんはぼくのほうを指差した。女のコがこちらを向く。大股でずんずんこちらに近づいてくる。目の前までやってきた。 「あんたが最強の盾のプルート?」女のコの声色はツンツンとがっている。「ねぇ、どうなの? さっさと答えなさいよ」  ぼくは苦笑してみせた。 「そうだよ。役に立たない最強とはぼくのことさ」 「うげー、気持ち悪っ。男の自虐なんて犬も食わないんですけど」 「きみは?」 「きみはじゃねーし。つーか、どけよ、オッサン。空気読め!」  女のコはマイルズさんの頭をばしばし引っぱたいた。  「活きのいいお嬢さんだ。有望だな」  マイルズさんはそう言うと、立ち上がって向こうへと歩いていった。  ぼくの隣に、女のコは座った。  細い腕を組み、細い脚も組む。
/12ページ

最初のコメントを投稿しよう!

0人が本棚に入れています
本棚に追加