1.激辛ラーメンとの出会い

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*****  ぼくはがんばって困り果てないようにした。そのかわり、絶望した。戦うことしか能がないニンゲンになにを望むのか……いや、必要としてくれるヒトはいるのだろう――それはわかっている。とはいえ、ぼくはいったいなにに望みを抱けばよいのか。目的や目標があやふやであることが嫌だ。ひどい、まったくもって、ひどい話だ。スト女史の言い分がもっともだとしても、彼女の一言でぼくは職を失った。すっかり滅入ってしまっているのも事実だ。たしかにぼくは強いのかもしれない。強すぎるのかもしれない。味方の活躍の場を奪ってきたのかもしれない。ただ、それを理由にして、多少の高い報酬はゆるされるだろうだなんて考えたこともない。仲間だったのだ。そう。みんな、心でつながっていた仲間だったはずなのだ。  けれど、それは気のせいだったらしい。パーティーのみんなはぼくのことをおもしろく思っていなかったらしい。スト女史の言葉でそれがはっきりした。はっきりしたので悲しくなった。ぼくの職業はたしかに"伝説の勇者"だけど、"伝説の勇者"? "勇者"ってなんだ? そんな肩書きがあったところで、いまのぼくは"無職"だ。どうしよう。いろいろなかたちでたくさんの報酬は受けてきた。あるいはその財産は、一生をまかなえるものなのかもしれない。ただ、ぼくはまだ二十代だ。どうしたって二十代なのだ。このままひきこもるような生活をして、ただ漫然と生きていたくはない。だけど、変な言い方だけれど、"勇者"ばかりをやってきたのが、ぼくだ。これからどうしよう。不安ばかりが募る。
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