1.激辛ラーメンとの出会い

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*****  朝遅くに起きるなんて、知っている限り、初めてのことだった。ゆっくり起きて、ゆっくり着替えて、ゆっくりパンを食べて、ゆっくり歯磨きをして、ゆっくりと表に出た。ギルドに行かなければならない。ギルド。登録者が職業ごとにカテゴライズされていて、たとえば、戦士(ファイター)と回復役(ヒーラー)がうまいことめぐり会ったら、これからモンスターを倒してその報酬として国からさくっと金銭を得ましょうという仕組みだ。  ぼくの職業はどう考えても"勇者"である。それだけではない。"伝説の勇者"である。なんともいかめしいカテゴリーなので、そうそう簡単に相方が見つかるとも思えない。実際にそんな感じで、だけどそんなぼくに声をかけてくるニンゲンもいて――年寄りのヒーラー、サムさんだった。浅黒い肌につるりの頭、白い法衣。ぼくの姿を見るなり、サムさんは驚いたようだった。ぼくが丸いテーブルをまえにして座ると、すかさず目のまえの椅子にまで移動してきた。 「なんだなんだ、親が死んだみたいな顔をしやがって。どうしてここにいるのか話してみろ。おっさんが相談に乗ってやる」 「サムさん」 「うん、なんだ?」 「ぼくはパーティーから追放されてしまったんです」 「追放だぁ?」サムさんはびっくりしたようだ。「なんでおまえみたいな奴が追放されちまうんだよ」 「ぼくができすぎるからだそうです」 「それだけじゃあ、ちょっと意味、わからねーな」 「とにかく、ぼくは要らないと判断されてしまったんです」ぼくはテーブルに突っ伏した。「一生懸命にやってきても、こういうことって、あるんですね」 「理不尽であるように思えるんだが?」 「どうしよう。どうしたらいいのかなぁ……」  頭をひっぱたかれた。  当然、犯人はサムさんだ。 「しけた顔するんじゃねーよ。おまえはまだ若いんだ。このまま腐っちまうのはよくねーぞ」 「だったら、ぼくはどうしたら――」 「たしかにおまえを引き込みたいニンゲンなんていないかもしれないな。なにせ肩書きが重すぎるからな」 「だったら――」 「まあ聞け。おまえにはおまえにしかできないことがあるはずなんだ。俺は家の稼ぎのために、こんなロートルになっても、身体で稼ぐしかない身だ。一方で、おまえさんは自由が利くはずだ。俺がおまえだったら、なんだってやるね。なんだってできるんだからな」  あまりに優しい文言だったから、ぼくはまた、しくしく泣いた。
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