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22、誘惑 ※
なんとなく予兆はあった。
リルがぼんやりとしてる時間が増えたように思う。
赤い頬をして、少し気だるそうにしていた。
何より唄を唄わなくなった。
「おい、大丈夫か?」
ぼんやりとした瞳のまま、ゆっくりとシュバルツを見るリル。
「…ん…」
一言発するとほうっと溜息を吐いた。
その様は妙に色気があって、シュバルツは一瞬ドギマギしてしまう。
「…寝とくか?」
「…ん…」
まだ陽も高かったので、リルを自分の部屋に寝かしつけた。
そこからいくら待っても出てこなくなる。
食欲もないらしく部屋からじっとして出てこない。
あまりに出て来ないので心配になって、シュバルツはリルの部屋に入った。
入った瞬間、いつもリルと性交する時に香る誘うような甘い香りが部屋中に充満していた。
ベッドの上に座っているリルを中心にその香りは一層濃くなっている。
まるで香りの色が見えるようだった。
その匂いを嗅いだ瞬間から、引き寄せられる様に勝手に足がリルの方へ向かった。
そして惚けた瞳で自分を見つめて来るリルにキスをする。
「ん…ん…ぅん…」
いつもより激しいキスを交わす。
そうするとまるで毒でも回るかのように頭の芯がぼうっとして、目の前にいる女を貪る事しか考えられなくなる。
「…しゅうちゃん…リルね、からだ、あついの…。おかしいの…」
「わかった。わかったからもう喋んな」
更に唇を重ねて舌を絡め合う。
いつもと同じ筈なのに全てが違って見える。
リルもいつもよりもずっと、積極的にシュバルツを求めた。
さくらんぼの実のような乳房の先端を舌で転がしているといつも以上にリルの反応が良い。
「はぁん…っ!きもちいいよぉ〜…」
シュバルツを見つめて縋る様に言った。
「しゅうちゃん…おねがい…もっとしてほしいの…」
請われて更に頭の芯がぼうっと惚ける。
そして夢中になって乳房にむしゃぶりついた。
その度にリルの反応はどんどん昇り詰めて行く。
気分の昂ぶったシュバルツはリルの足を開くとその花芯へと真っ直ぐに向かい、顔を埋めてしゃぶりついた。
最初は優しく、徐々に激しく吸い付いて、その強弱にリルが反応するのを耳で聞いて楽しんだ。
「あああ゛んっ!あっ!そこ、そこきもちいいのっ!」
気持ちいいと言った場所を更に激しく攻め立ててやると、リルはイッてしまう。
「ああぁぁぁんっ!あああ゛っ!そこ、もうダメ〜っっ!」
肩で息をするリルを眺めながら、自身の猛茎をリルの秘部へと押し当てる。
もう1秒だって待てそうになかった。
「…あっ…!」
リルの濡膣に入った瞬間、小さな声を上げて、さらにその膣窟をきゅうきゅうと締める。
それがいつも以上に自身の精を搾り取ろうとしている事がわかった。
殆ど操られる様に、欲望のままリルに欲情をぶつける。
激しく動かされる腰にリルも同じ様に自身の腰をくねらせて共に快楽を貪る。
「あああぁぁん!しゅうちゃんっ!もっといっぱいしてぇ〜っ!」
更に激しく求めるリルに更に興奮したシュバルツは、もっと激しく突いた。
いつもならリルを慮る理性があるのに今日はそんなものはカケラすら頭の中には無かった。
リルが嬌声を上げて達した事を伝えると同時にシュバルツもリルに自身の精をぶつける。
その瞬間、魔力が大量に持っていかれたのがわかった。
ぐったりとリルの上で果ててしまう。
今までリルに魔力を吸われた事などなかった。
他の淫魔と寝た時は幾許かは吸われたが、ここまで大量に吸われた事はなかったので、シュバルツは戸惑った。
リルと頬を合わせ、回らない頭で魔力を吸われた事について考えるが、これでリルが強くなるなら、まぁそんなに悪い事でもないな…などとぼんやり考えをまとめた。
しばしの休憩の後、またリルから求めて来たので、応えてやる。
目の前にリルがいて、瞳を潤ませて自身を見つめ、まだ足りない、もっと欲しいと強請られれば、拒める筈もなかった。
それは、シュバルツの魔力が干上がるまで続いた。
◇◇◇◇◇
魔力が干上がって、やっとの事でリルの部屋から這い出る様に出て来たシュバルツをクロエはカウチソファに座って出迎えた。
「…リルがおかしい」
シュバルツはクロエを見て言った。
クロエはシュバルツを一瞥もせずに一言答えた。
「多分、発情期だ」
「…は?発情期?そんなもん500年に一回とかだろ?」
「その500年に一回が来たんだろ」
悪魔の発情期は完全に個体によって違っている。
一生迎えない者もいれば、500年から1000年の範囲で迎える者もいる。
稀にもっと頻繁に迎える者もいるが、それでもせいぜい300年単位だ。
「きっとリルはその内魔界に帰りたがる」
「バラクダに戻るのか…」
子を孕んだ女の悪魔が魔界で安心して子を産める場所はバラクダの幹の近くしかない。
本能の中に仕組まれるものとして、バラクダの元に戻って出産する。
子を産んだ者は産むとすぐに子供を置いて逃げる。
通常悪魔は養育せず、産まれた時から自身の足で立ち、バラクダに対する畏怖の念が現れるまではバラクダの実や蜜で育つ。
これがバラクダは畏怖の存在でもあるが、母なる世界樹でもある所以だ。
「じゃあ、あとは任せた。俺はリルの所へ行く」
「…ああ」
そう言い残すと、クロエはリルの部屋に入り、扉はパタリと閉じられた。
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