敵は我にあり

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 彼は今、ロッカールームのベンチに座している。頭からタオルを被り、周りの雑音を遮断し、黙している。  今しがた終えた地区大会の準決勝。3位でゴールし、タイムで拾われ、何とかギリギリで決勝に駒を進めることができた。  前はこんなことなかったのに。確実に2位以内に入って決勝まで進み、あらゆる大会を制してきたのに。  地区大会で3位?  冗談じゃない。  彼は伸び悩んでいた。練習量は落としていない。むしろ、高校に入ってからの方が、以前よりも量も質も上がった。  いつかは日本代表になる。  そしてオリンピックでメダルを取る。  そう豪語してきた彼にとって、今回の結果は屈辱以外の何物でもなかった。  どうしてこんなになっちまったんだろう?  どこで食い違ってしまったのだろう?  彼は拳を握りしめ、大きく息を吐いた。
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