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「おはようございます、黒池さん」
部屋を出て、細い廊下を抜けるとそこには見慣れた顔があった。
────飛向冰李。
飛向兄弟の兄で、昔は仲が悪かった人だ。今では頼れる相方くらいにまでランクが上がっている。
彼は捜査一課の人なのだが……捜査一課なのになぜ失踪事件を?まさか選ばれたのって、僕へのお目付け役!?……そ、そんなことは……ないか。
「冰李さん!おはようございます!」
とりあえず僕はぺこりと頭を下げた。
弟も警察官をやっているので、下の名前で呼んでいる。ちゃんと許可は得たので大丈夫だ。
弟との差は髪の色の左右の違いと性格で、左右で白と黒が分かれている。あと、テンションが高いのと低いのだが……今では両方高くなっている。
「推攻課の外に出るなんて、何か用事でも?」
「あ、はい。先輩が失踪事件の手伝いをしろと。冰李さんは捜査本部の場所をご存知ですか?」
「黒池さんも失踪事件を?奇遇ですね、俺もなんです。一緒に行きましょう」
「はい!」
よかった、頼れる人が一緒だ!これなら何とかなること間違いなし!
「前に行った瓦礫の王の部屋は覚えていますか?」
「はい。あ、あそこなんですか?」
「ええ。覚えているなら話が早い。急ぎましょう」
急ぐと言っても、早足ではない。落ち着いている人だからといって、さすがに落ち着きすぎなのではないか?
……と冰李さんの方を見ていると、彼がその視線に気付いて振り返った。
「どうかしましたか?」
「い、いえ。何か情報はあるのでしょうか?」
「失踪したのは女の子らしいです。それくらいですかね。よくある話です」
「そうですか……。ですがどんな事件も立派な1つの事件です。早く見つけましょう!」
僕は走ろうとしたが、その手をガシッ!と握られた。勢いでつんのめりそうになる。
「な、何するんですか!」
たたらを踏んで振り返ると、冰李さんは掴んでいない左手をポケットに入れて目を伏せた。
「ふふ……。たまにはいいじゃないですか。こうやって共同で捜査するのも珍しいんですし、ゆっくりしましょうよ」
「ええ……?冰李さん、やっぱり僕たちと関わって性格変わりましたよね?」
「ふふふ……!さぁ、どうでしょう?」
冰李さんは軽いスキップをしながら先に進んだ。……って!僕を置いてかないで!!
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