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「冰李さん」
「はい」
僕はメモにバツをつけた。
「もう無いです、場所」
「みたい……ですね。そりゃあ東京ですからね」
冰李さんも頭を抱えた。
聞き込みとは近隣住民に聞くことが多いのだが、オフィス街となっているここ周辺では、情報を得ることは難しい。かといってサラリーマンたちに聞くにも、見た人は限られてくる……。
「ど、どうするんですかっ!パトロールや資料整理しかしてこなかった僕に聞き込み調査なんて無理ですよ!!!」
「落ち着いてください。情報を整理するので……」
「情報なんて無いじゃないですかー!!」
ギャーギャー騒いでいると、軽快な音楽が流れ出した。冰李さんのポケットからだ。僕はクラシックだからね、絶対に違うよ。……というか、冰李さんってポップミュージックなんて聴くタイプだったんだ……。
「──おっと。はい、飛向です」
『────急いでくれ』
「わかりました」
冰李さんは極めて冷静に返事をすると、スマートフォンの通話を切った。
「どなたですか?」
「富山さん。目撃情報があったから戻ってくれ……だってさ」
「おお!さすがですね!普段もこのくらい早いのでしょうか?ふふ、貴重な体験ですね!」
さっきまでの機嫌が吹き飛んだ僕は、冰李さんの後を追って駅へと向かった…………。
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