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「なるほど。そんなことが」
富山さんは僕たちの話を聞きながら部屋の状況を確認していた。
「すいません、私の不手際で……」
冰李さんはまた気を落としてしまった。
「起きてしまったものは仕方ない。また次、頑張ればいい」
富山さんはいつもの彼からは想像つかないほどの優しい声で励ました。
「はい……」
「そういえば黒池」
「は、はいっ!?」
富山さんに名指しされるなんて珍しいので、声が裏返った。しかも名前を覚えられているなんて!……ま、まぁ推攻課だからかもしれないけど。
き、緊張して心臓が口から出てきそうだよ……!!
「上原は元気にしているか?」
「えっ!?は、はいっ!元気すぎるほどに!」
毎日顔を合わせるはずなのに、なぜそんなことを聞くのだろうか?
「そうか。ならよかった」
そう言ってまた捜査に戻る。この人は一体何がしたかったのだろうか。
「…………ん?これは」
富山さんは、ステージ近くに行ったときにまた違った声を上げた。何かを見つけたのだろう。その手には名刺ほどのカードがあった。
「なんですか?それは」
僕と冰李さんは富山さんの方に向かう。床に散らばっているガラス片とかを踏まないように気をつけないと。
「……どうやら、ここに連れて行かれたようだな」
見せられた白い紙には、住所が書いてあった。元々あった誰かの忘れ物じゃないか?と思ったが、後から置かれたもののようで、真新しくそして綺麗な紙だったのでその考えは消え失せた。
「早速行きましょう!」
「待て」
「のわ!?」
髪の毛を引っ張られ、思わず後ろにコケそうになる。
「黒池」
「何でしょうか?!」
何か悪いことでも言ったかな、と不安になる。
「……これは本当の事件だ。だからと言って、無茶だけはするな」
「…………わかっていますよ。心配しないでください」
僕は微笑んだ。
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