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あの後、中々帰ってこない私を迎えにきたお父さんに発見されて私は救出された。家に帰ってすぐにお風呂に入れてもらって温まることができた。お母さんは泣きながら私を抱きしめて離さなかったし、お父さんは怒りまくってあちこちに電話をしていた。幸い風邪もひかずに次の日は学校に行くことができた。でもその日から私は「だるま」と呼ばれるようになった。
「あ、だるまちゃん、久しぶりね」
町で昔の友人に会った。小さな女の子を連れていた。
「娘さん?」
「そうなの。来年から小学生なのよ、ね?」
「うん!」
自慢気に胸を張る少女の頬は桃色だった。
「だるまちゃんは?」
「まだ独身」
「そうなの? 早く結婚しなよ。子どもって可愛いわよ」
「本当、可愛いわね」
少女の頭を撫でた。すると少女は上目遣いで好奇心丸出しに聞いてきた。
「だるまって名前なの?」
悪気もなくそう言った少女の目は、横にいるお母さんそっくりだった。あの日曜日に「もっと大きな雪だるまを作ろうよ」と言ったあの目だ。
「やだ、あだ名よ。でも何で"だるま"なんてあだ名になったんだっけ?」
忘れたというのか。自分が張本人なのに。あの日の寒さが蘇ってきた。
私はあの日公園にいた友だちと、偶然をよそおい会う事にした。忘れている人が殆どだった。「子どもの無邪気ないたずら」で笑って済ますやつもいた。
誰か1人でも謝ってくれたら私の心も溶けたのに。私の心は一層凍りついた。
忘れてるのなら、思い出させてあげよう。
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