最後の挑戦は書店の「聖地」

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最後の挑戦は書店の「聖地」

「日下部くん、yahooニュース見た? いい情報があったよ」  駅前書店の女性店長から電話があった。 「ありかとうございます」 「なんてったって、私、日下部くんの応援団長だからね」  健は急いでyahooニュースをチェックしてみる。 <この書店で平積みになった本は、きっとベストセラーになるといわれている。それはどこか? 東京都春日市勝川駅前にある五階建ての「TOKYO BOOK CITY」もそのひとつだ! 書店の「聖地」と呼ばれている>  健はこの書店に営業をかけようと考え、すぐに彩香へメールを送った。 〈ムリ、ムリ。作家が自分で行ってもすぐ断られている。あそこの社長はものすごく厳しいと言われている。一番大切な読者の日下部君に、みじめな思いなんかさせたくない〉 〈みじめなんて思いません。先生の本をこれからも読めるなら〉  彩香は必死で止めたが、その理由を健は書店で知ることとなった  入口に入ってすぐ。大きな台に、アイドルグループ「スター・ライト・キッス」の『エッセー&ポエム&写真集』をはじめ、「スター・ライト・キッス」関連の本が平積みされている。 <「スター・ライト・キッス」の本が全て揃うのは、特別契約を結んだ「TOKYO BOOK CITY」だけ>  大きな広告が掲げられ、センターメンバーのひとり、高蔵サキ《たかくらさき》の等身大パネルが飾られている。二十二歳。グループの人気投票では必ずベスト3に入っている。パネルのそばには制服警備員が立っている。サキの人気のほどが分かる。  眼鏡をかけ、上から目線の社長が受付カウンターに出てきた。「倉橋(くらはし)」の名札が冷たく光る。そしてイジワルそうな顔の副社長がならぶ。「及川(おいかわ)」の名札。  健は大きく頭を下げると、緊張した表情で来店目的を告げる。チラシを差し出す。  だがふたりの反応は、予想以上の厳しさだった。    
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