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個人写真
僕は、これを開くとあの子の姿を探してしまう。高校生の頃、好きだったあの子を探してしまう。気持ちを伝えることなく終わってしまった淡い初恋の相手であるあの子のことを探してしまう。
何度見てもそこに写るあの子が何を思っているのか分からない。普段は笑顔だった人も真顔で写ることが多い個人写真だとしても、あの子写真は、異様な存在感を放っている。
ただ、僕があの子を特別視しているだけかもしれない。それでも、ここに写っているあの子には、生気を感じることが出来ない。
僕は、三年間同じ教室で過ごしてきた。それでも、あの子については何も理解できていない。
だからこそ、卒業アルバムに写るあの子を、見ると今も胸が痛くなる。何を思っているのか表情が読めないあの子の顔を見ると、今もあの日々が蘇ってくる。そして、あの日の後悔が僕を襲う。
気づかない振りして無理していただけで、本当は助けを求めていたのではないかと思えてしまう。
僕の妄想にしか過ぎないけれど、そんな気がしてしまう。
もし、あの時話していれば、伝えていれば、この痛みはなかったのかもしれない。
それに、僕は、ヒーローにもなれていたかもしれない。
本当は、人に対して好き嫌いがあってはいけない。そんなことは分かっている。
それでも、あのことを知っているから、あの子以外の同窓のことを好きにはなれなかった。
僕は、あの学校が嫌いだった。卒業してからも、何度も開いているのは矛盾しているかもしれないが、僕は確かに嫌っていた。
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