第21話 夕焼けの中でも、あなたとふたりきりにはなれない

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第21話 夕焼けの中でも、あなたとふたりきりにはなれない

 窓に、かつん、と何か小さくて硬いものが当たる音がした。  何だろう。  レギーナが窓に歩み寄ると、塔の下から呼ぶ声がした。 「レギーナ!」  ほっとして息を吐いた。  塔の上からでは顔かたちまでは見えないが、はしばみ色の髪、すらりと伸びた手足、上品で優雅な立ち姿からわかる。ロビンだ。  外は見事な夕焼けだった。西の山の端には燃えるように真っ赤な太陽が沈みつつあり、東の山の端には紫色の空に橙色の雲がたなびいていた。  季節はまだまだ夏だが、日が沈むのは少し早くなったかもしれない。夏至を過ぎたばかりだというのに、レギーナはほんの少し寂しさを覚えた。 「体調はどうですか」  彼がテオドールのような悪ガキがするように小石を投げたのだと思うと、それだけで胸がいっぱいになるほど嬉しい。 「元気です! もともと大して何かあったわけではありませんでしたし、ゆっくり休んで頭を整理できました」 「そうですか。それなら何よりです」  互いの顔を見つめ合う。目と目が合っている気がする。近くに行けば、彼のあの翠の瞳が見えるはずだ。  今すぐそばに行きたい。そばに行って抱き締めたい。
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