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兄の手からむりやりティーカップを取り、ソーサーに戻した。そこはさすがに侯爵令嬢として生まれ育って十七年、怒りに任せてカップを地面に叩きつけたりはしないのである。
「この前はお兄様が城に上がるのに馬の乗り入れを禁止すると言い出して!」
「お前が強くてたくましい男がいいと言い出したからではないか。だいたい男児たるものまずは足腰、たかだか徒歩一時間程度の距離を登ってこれない程度の人間には何も成し遂げられないのだ」
「さらにその前はお兄様が土産に王都で城の全員に行き渡るような菓子を持ってこいと言い出して!」
「王都に顔が利くような人間でなければこの先たかが知れている。お前が王都の宮廷に自由に出入りできるようになるためにも人脈が必要だ。というかあの時はまずお前がどうしても王都のケーキ屋のケーキが食べたいと騒いだのだからな」
「どうしてわたしの冗談を真に受けるのよ! そんなの婚約がまとまるかどうかの瀬戸際に本気で引き合いに出すわけないじゃない! しかも何でもかんでも拡大解釈するのやめて! 兄様を通すといつも話が大袈裟になるのよ!」
兄が溜息をつく。そして大きく口を開く。
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