0人が本棚に入れています
本棚に追加
◆Side AB-1
梨央「向こうも同じ状況になってるよ! 雷が鳴って、停電して、閉じ込められて、えっと、テレビもついたみたい。こっちを指差して何か話してる」
みはる「何? どうなってるの? ここ、現実? 早くおうちに帰りたい……」
沙穂「みはる、いったん落ち着こう。声が聞こえるってことは、テレビ越しにあの人たちと話せるかも」
みはる「やめとこうよ! 敵かもしれないって!」
厚司「あの……聞こえる?」
みはる「うわ! 話しかけてきた!」
梨央「はい、聞こえてます」
みはる「返事しちゃダメだって! 罠だよ! お化けだよ! さっきの怖い話のやつだよ! ほら、3人組の男じゃん! 梨央のせいだよ! 沙穂、お願い。頭なでて……」
沙穂「はいはい。なでなでしてあげるから、少しの間、静かにしてよっか。梨央が上手に話してくれるから」
みはる「……うん。ごめんなさい……ぐすん……ママぁ……」
シュウ「大丈夫? 落ち着いた?」
梨央「……すいません。立て込んでました。そっちはどういう状況ですか?」
圭吾「君たちと同じだよ。怪談、というか君たちの話をしてたら、こちらにも異世界が侵食してきたらしい」
梨央「やっぱり、あたしたちの話だったんですね」
沙穂「こっちとあっち、どっちが虚構の世界なのか、なんてね」
みはる「やめてよ! 私は本物だもん! ママも本物だもん! 偽物なのはパパだけ!!」
沙穂「はーい。お水飲んで落ちつこっか」
梨央「……その、そちらのお話の続きというか、最後って、どうなるんですか? あたしたち、生きて帰れますか?」
厚司「……(間)」
圭吾「厚司、話せよ」
シュウ「……まさか、全員死ぬってこと?」
みはる「やだ聞きたくない!」
沙穂「よしよし。今から沙穂がみはるのママだから。ママの言う通りにすれば大丈夫だからね」
みはる「ママぁ……助けて。いい子にするから。私いい子にするから。帰って来てよぉ」
梨央「……何かできることがあるかもしれないなら、聞いておきたいんです。お願いです。話の続きを教えてください」
厚司「……このあと、両方の部屋に電話がかかってくる。それを取らない限り、いつまでも鳴りやまない」
シュウ「電話を取ったらどうなるの?」
厚司「先に取った方の部屋に化け物が来る。首から上がぐちゃぐちゃで、血に染まった福寿草の花が絡みついた女が……いや、そんなのはどうでもいいか。とにかく、先に電話を取った方の部屋が化け物に襲われて、もう一方は助かる」
圭吾「残酷な選択だな」
みはる「二人とも、電話取らないでよ!? 私、死なないからね! 本物のママのところに生きて帰るんだからね!!」
梨央「そういうことはちゃんと話し合わないと……」
シュウ「……でも、僕はその子の言う通りにした方がいいと思うな。論文読みあさってケチつけてばかりの大学院生より、君たちの方が生きて社会に出るべきだよ」
プルルルルとけたたましく電話が鳴る。
最初のコメントを投稿しよう!