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◆Side AB-2
みはる「ひぃ!!」
梨央「……電話だ」
沙穂「かかってきちゃったね」
厚司「こっちもだ」
みはる「お兄さんたちが取ってくれるんですよね。……あはは。いま、そういう流れですよね。年長さんですし。お言葉に甘えていいんですよね。助けてくれてありがとうございます!」
圭吾「俺は死にたくないけどな」
シュウ「ここは男気見せるところでしょ! 僕はあの子たちを犠牲にして助かっても嬉しくないよ」
圭吾「俺は嬉しいよ。俺は俺の研究でもっと有名になりたいし、そもそも男気っていうのがどんなものかよく分からない」
厚司「論点はそこじゃないだろ」
圭吾「まあ、ずっと電話取らなかったら永遠にここで生きていられるんじゃないか?」
みはる「こんなところにいられるわけないじゃないですか! 雷がバリバリいって、雪がどんどん積もって、暗い! うるさい! 出られない! どうやって死ぬのかビクビクしないといけない! こんなの、生きてるって言えますか!?」
厚司「……落ち着いて。大丈夫。生きるのは君たちに譲るよ。俺が電話を取ってしまえばそれで終わりだ」
圭吾「ちょっと待て」
シュウ「議論してる時間なんてないって! 頭がまともな間に決めないと冷静な判断ができないでしょ!」
圭吾「少しだけ確認したいことがある。君たちが泊まってるのは福寿荘って旅館か? 近くに大きなプラネタリウムがある」
梨央「はい。間違いないです」
圭吾「部屋番号は?」
沙穂「108号室。1階のカドの」
圭吾「まったく同じ部屋か」
シュウ「そりゃ怪談に巻き込まれてもおかしくないね」
厚司「知らなかったんだよ。この旅館の話だったなんて」
圭吾「それはいい。そっちの日付は? 西暦から頼む」
梨央「2020年の2月25日です」
圭吾「ちょうど4年前か。それくらいあれば望みはあるだろう」
厚司「おい、どこ行くんだ?」
圭吾「電話を取るだけさ。化け物は何を言ってくるかな……っと、福を君たちに、だって? 俺の想像する福が来てくれることを願うよ」
みはる「……あの、ってことは、私たち、帰れるんですよね?」
圭吾「怪談の通りだったらな」
みはる「ありがとうございます! ほんと、ありがとうございます! やったあ! ママに会える! みなさん、命の恩人です!! あはは!!!」
沙穂「みはる、ちょっと静かにしてよっか。殴るよ」
みはる「殴らないで! ママ、殴らないでよぉ……」
梨央「……本当にいいんですか? さっきは死にたくないって」
圭吾「まあ、覚えてたら思い出してくれ。雪の降る4年後の2月25日、ここに俺たちがいたってな」
音もなくテレビが消える。
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