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雄太の視界はあっという間に、駅前の裏通りを見降ろす位置にまで上昇し。やがて駅前全体を、駅周辺までをも見渡せるほどの高さまで浮き上がっていた。
「ここまで出来るようになるには、それ相応の訓練が必要だが。君なら出来ると思う。期待しているよ」
同じように浮かび上がっていた易者は、空中で雄太にそう告げると。しゅんっ……! という空気を切り裂く音を残し、雄太の前からあっという間に「高速移動」していった。
「まあ、結構厳しいトレーニングもあるけどな。頑張れよ」
「ここまで来たら、もう後へは引けないぜ? 頑張るしかないな」
続いて、金髪男とチンピラ風が雄太に言葉をかけ、易者と同じく瞬く間に、しゅんっ! っと目の前から消え去り。駅前の、地上100メートル以上はあろうかという空中に。雄太と、雄太と手を繋いでいる、赤毛女子だけが残された。
そこで赤毛女子は、先ほどのような優し気な笑みを浮かべ。
「あたしはエリカ。あなた、お名前は?」と、雄太に問いかけた。
「あ……僕は、ユウタです。宜しくお願いします」
そう言いながら、空中で「ぺこり」と頭を下げる雄太を見て、赤毛女子=エリカは「くすっ」と笑い。
「ユウタ、ね。こちらこそ宜しく、ユウタ!」
その言葉と同時に、エリカは雄太の右手を、更に強く「ぎゅっ」と握りしめ。そして、2人の体は更に高く、雲に突き刺さるくらいの勢いで。「しゅんっ!」「しゅんっっ!!」っと、矢のような速さで、空の彼方に飛び去っていった。
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