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「……はっ……はっ……はっ……はっ…………」  一人の夜はとても長い。その間ずっと北海道さんのことを考えていられるのは、睡眠よりもずっと心地良かった。特に長く一緒にいられるこんな夜は。  北海道さんといるといつも不思議なことばかり起こる。幽霊に会ったり、銃口を向けられたり。北海道さんが無意識に呼び寄せているとしか思えない。  俺のことも不安定な存在でいることで無自覚に惹き付けている。 「……はぁ……はぁ……はぁ……っ」  不摂生なくせに俺よりもなだらかでキメの整った肌に、溜めに溜めた思いがあと少しのところで吐き出せそうだった。  体に覆い被さり、顔を間近で眺め、首筋に鼻を埋め、胸の鼓動を聞いた。 「……北海道さん、まだ起きないでくださいね……」  眠っている北海道さんの体に体を擦りつけ、今にもイけそうな体を手で激しく扱き続けながら、北海道さんの薄い陰毛を撫でた。 「…………っ」  寝ている北海道さんと同じように力なく寝ている北海道さんのものを咥えた。  何度も何度も口の中で北海道さんを堪能したあと、やっとの思いで、溜め込んだ思いを北海道さんの体にぶちまけた。 「……あっ……あっ……あっ……!」  顔にまで飛んでしまい、北海道さんが俺のせいで汚れてしまった。  それを濡らしたタオルで拭っていると、久しぶりに満足感が訪れ、猛烈な睡魔に襲われた。  昨日のバス停でまたバスを待っていた。 「北海道さん、大丈夫ですか?」  北海道さんはベンチの背に体を預けて座りながら首を横に振った。  気持ち悪さはなくなったようだが、いつもより顔色が悪い。 「……なんか昨日変な夢を見たんだ」 「どんな?」 「君に襲われる夢」 「……たしかに。昨日うなされてましたもんね」 「あ、やっぱり?」  北海道さんは朝までしっかり眠っていてくれた。 「もう二度と船に乗るのはやめましょうね」  いつもより視界がすっきりしている気がして、北海道さんの横で空を見上げると、天国みたいな見事な晴天だった。 「実は妹が結婚することになったんです」 「え?」 「いずれ旦那とうちの弁当屋を継ぐそうで、俺は身の振り方を考えなければならなくなりました」 「へー、あの美絵ちゃんがねー」  中学生の頃から妹を知っている北海道さんは驚いたようだった。 「北海道さん。俺を雇ってもらえませんか?」 「え?」  引き続き目を見開いて北海道さんが驚いた。 「俺が北海道さんの事務所を守ります」  もうあんな危険なことが起きないように、この人を全力で守ろう。  しかし北海道さんが首を横に振った。 「だめだめ。うちでは君の給料は払えないよ」  一応事務所の現状が分かっているらしい。 「じゃあ今以上のお手伝いを」 「いいけど、絶対に弁当屋辞めないでよ? 君の面倒は見られないからね?」 「はい」 「それと島根くんはもう少し痩せた方がいいよ。不摂生はだめだよ?」  この晴天は東京まで続いているんだろうか? 明日からまた弁当の配達の日々が始まるんだ。そして眠れない日々も続く。 「北海道さんの弾除けになりたいんです」  俺の冗談に、北海道さんが晴天に負けない笑顔で笑った。 「そんな依頼は来ないよ」
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