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「あいつらだ」
そいつらはいつも群れて得体の知れないものを担いでいる。
ファルは数人の男たちの楽しそうな後ろ姿を
無機質な視線で眺めながら後ろを歩いていた。
その群れはいつもの食堂に吸い込まれるように消えて行った。
ここの食堂がどういうシステムなのかはわからないが
何かを持った男たちが食堂に入っては腹を満たして出てくる。
時には手にしたズタ袋が四方八方に蠢いている時もある。
通りに面したその食堂の壁面は腰丈以上がガラス張りだ。
賑やかに食している様が無音ながら見てとれる。
ファルは身長は高くないが
四肢のバランスがよく程よく痩せていた。
顔は小さく頬には無駄な肉がついていない。
目は大きすぎず品があり眼差しには色気があった。
「お腹が空いた」
ファルの引き締まった口元からポツリと言葉が落ちる。
自分が思っていたよりガラスの内側の様子を眺めていたのかも知れない。
中の一人が視線を合わせ陽気に手招きをしてきた。
知らない男だ。
躊躇した。
でも・・惹きつけられる。
ファルは食堂のドアを開けた。
ドア一枚隔てただけなのに店内は罵詈雑言で渦巻き
粗野で大食の男たちの熱気がこもっている。
今まで静かな通りで冷たい空気を纏っていたのが嘘のようだ。
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