できることなら

3/14
前へ
/14ページ
次へ
 いつものドライブコースから少し足を伸ばして、水族館に行った。  俺はクラゲの展示が好きで、特にミズクラゲの浮遊感はどこの水族館に行っても必ず足を止める。 「康平ってホントにクラゲ好きだね」 「なんかフワフワして気持ち良さそうだろ?」 「刺されたら痛いでしょ」 「見た目の話だよ」  他愛のない会話と感想。ミズクラゲの展示の前ではそんな会話をした。  イルカのショーを見た。  前列へ濡れに行く勇気がないので、俺は大体1番後ろの席から遠巻きに見る事にしていた。  隣にいた美緒は不意に前列に向かって歩き出した。濡れたりするのは嫌いなはずなのに。本当は前で見たかったんだろうか。 「美緒、待てって!そんなに前に行くと濡れるぞ!」  声をかけたが、振り返ってこちらに笑いかける。連れ戻そうと腕を取ってもどんどん前列へ向かって歩いていく。 「マジで濡れるって!」  声に出すと同時に、イルカが大きく煽る尾ひれが大量の水飛沫を客席前列へ浴びせかける。  俺たちは思い切り水飛沫を浴びてしっかりと濡れてしまった。    美緒はこちらを向き、弾ける様な笑顔を見せている。本当に楽しそうな表情をしていた。 「きゃははっ!めっちゃ濡れた!康平!」  ……ん?  水族館って美緒と2人でいったことあったっけ?  この水族館は子どもたちが小さい頃に家族でよく行った場所じゃないか?
/14ページ

最初のコメントを投稿しよう!

3人が本棚に入れています
本棚に追加