できることなら

9/14
前へ
/14ページ
次へ
 浮ついた気持ちから始まった関係は長くは続かず、真由子に対しても不義理を働く様な形で数ヶ月後には真由子に別れを告げる事になった。  美緒とヨリを戻すべく動き出す訳だが、共通の友人から美緒の事を聞いた。  俺は意外とあっさりとした別れだと思っていたのだが、別れを切り出した時は、目の前が真っ暗になり「わかった」と返事をするしかなかったそうだ。その後、美緒は食事も摂る事が出来なくなり、入院寸前まで体調を悪くしていたらしい。  何より衝撃だったのは、別れる原因は俺が結婚の約束を取り付けられずヤキモキしていたのがそもそもの原因だったのだが、美緒曰く(いわく)、結婚相手は俺しかいないと友人や親にも話していたらしかった。  返事を渋っていたのは、美緒は片親で親を置いて家を出る事を心配しての事だったそうだ。  俺は美緒の事を全く考えずに、結婚の話を進めようとしていたのだった。もっと美緒の話を聞くべきだった。もっと美緒の事を知らなければいけなかった。  それなのに俺は1人で結婚を焦って、何もかも1人で決めて、馬鹿としか言えない1人芝居に明け暮れていたのだ。  そして、また美緒の気持ちを無視して、ヨリを戻そうと再開の約束を取り付ける。    その様な状況で会う事を許してくれただけでも美緒の懐の深さに感謝しないといけない。  
/14ページ

最初のコメントを投稿しよう!

3人が本棚に入れています
本棚に追加