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 受けたTVオーディションは、降雪のなかつくった漫才で合格。  プロデューサーは機嫌が良かったのか、大笑いだった。  番組の収録時には、尊敬する司会者から「アオハルやったね。ふっきれてて爽快だ」と褒めていただいた。  さらに運のいい時はいいもので、全国放送をされる漫才大会で決勝まで勝ちすすむ。  優勝はできなかったけれども、私たちのいるちっぽけな事務所では初めてのことだそう。  ──そこからは二時間くらいの睡眠で過ごす毎日が待っていた。徹夜の日も。  でも、真っ白だったスケジュールが埋まっていくのは痛快で、私たちはバネがはじけたように働きつづけた。いい気になんてならないし、天狗になんてなりようがない。ずっとずっと売れなかったんだもの。  ありがたいことに、今のところ仕事は尽きる気配がない。  もちろん、人々に飽きられて、また悩む日はいつかやってくるだろう。でも番組収録の合間、仮眠をとる私のまぶた裏には、あの日の漫才が浮かぶ。 『今日も頑張って漫才をやって行きましょう』  あの雪夜の漫才を忘れなければ、私たちはやっていける。  そう、確信している。 〈 了 〉
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