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エリックはまだ彷徨っている。
その報告を聴いた時、誰もが耳を疑ったはずだ。
何故ならば。
「ま、町が……!荒野に町ができてます!突然です!」
「はあ!?」
そう。某国某州、岩と砂ばかりの荒野に突然町ができたのである。あまりにも不自然で、あり得ないことだった。
何故ならその荒野には何本も道路が通っていて、毎日車が行きかっているのである。その町は国道と国道の間、道を塞がない形で出現したわけだが――異変があったなら通った者達がすぐに気づいたはずなのだ。
なんなら、大統領の自家用車だって数日前には近くの国道を通過している。それなのに。
町は、突然現れたとしか思えなかった。それも、真夜中から明け方までの間に、どこからかワープしてきたかのように。
だってそうだろう。
誰がどうやったら、見慣れない高いビルや塔の群れを、たった一晩で作り出せるというのか。しかも、その町は不自然なほど円形をしている。円形の塀にぐるっと囲われているのだ。
「一体、何がどうなってるんだ……!?」
SNSの時代だ。あっという間に町の噂は国中どころか世界中に広まった。
これは宇宙人が作った宇宙船なのではないか?
もしくは神様が作り上げた理想郷なのでは?
いやいや、実は某国大統領がひそかに作っていたシェルターを、ミスでうっかり地上に露出させただけなのでは――うんぬんかんぬん。
噂が噂を呼び、あっという間に話題になった。件の町を見て見ようと、多くの人が某国に押しかけることになったのである。だが。
「あの町は得体が知れなさすぎる。無闇矢鱈と、マスコミと野次馬が押しかけるのはあまりにも危険だ!」
いくらなんでもこれはまずいと、大統領がお触れを出した。
つまり、この町の調査が終わるまでは、民間人の立ち入りは一切禁止としたのである。
クレームをつける者もいたが、反面、マスコミの半数以上は素直に従った。何故か?
SNSにはその理由をはっきりと映した動画がアップされていた。
『うおおおおおおおおおおなんだこれ!?』
『へ、ヘリが見えない壁にぶつかった!?』
『あの町って、ドーム型になってるってことか?硝子みたいな物質に、町全体が覆われている?』
『いや、硝子よりも頑丈な光の粒子みたいなものらしい』
『すっげええええええええええどうなってんだこれえええええええええええええ!?』
こっそりヘリやドローンを飛ばしたマスコミは、悉く機体を破損させて損害を被った。
町は、謎の透明なドーム、あるいはバリアによって守られていたのである。
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