河村一樹から仁科愛美へ 11

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河村一樹から仁科愛美へ 11

 それから俺は、愛美さんに会う度に告白をした。  もちろん、彼女の実習に影響が出ないよう、できるだけ節度を守った。用もないのに保健室に行ったりしなかったし、毎日待ち伏せたりもしなかった。  チャットでのメッセージも、一日数通までに抑えた。  彼女の返答はいつもNOで、それが覆ることはなかった。  そのうち、実習期間が終わった。  愛美さんは東京に戻った。  実習が終わった以降は、メッセージを送っても返信が来なくなった。既読になるから、ブロックはされていないみたいだけど。  振るなら、もっと正直な気持ちで振って欲しい。童貞を弄びたかっただけという理由だとしても、納得して諦める。それが本心なら。  でも、愛美さんは、そんなタイプの人ではない気がする。惚れた相手に対する幻想かも知れないけど。  本当のことを知りたい。愛美さんの、本当の気持ちを知りたい。  だから決めた。東京の大学を受験しよう、と。  今のところ、俺には、特に将来の夢はない。ボクシングでプロになる気もない。ボクシングでの俺のモチベーションは、あいつに勝つことだけだった。頂点を目指すつもりもないのに、プロ入りする気になどなれない。  それなら、恋愛が理由で進学先を決めてもいいと思う。やりたいことなんて、進学してから見つければいい。  大学に進学して、何かを学べれば。何かを見つけられれば。  そんな結果になれば、それでいい。
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