第五章 青い計画

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ゆるい蛇行を経て、明治通りはより道幅の広い道路へと合流した。 陽一は交差点で方向を変え、麻布通りを北上するらしい。 カーナビの地図を先回りしたら六本木という地名に突き当たったが、ピンとこない。事前に調べておいた陽一の自宅から半径5キロ圏内のうち北半分に絞ってルートを読もうにも、ただのランニングじゃ僕にわかるわけがない。 結局僕らは、陽一が折り返す地点を目標にすることにした。 今後どこかのタイミングで自宅方向へ舵を切る瞬間が来るはずだから、そこで陽一の身を確保するのだ。 午前2時を前にして、東京の街はただ、静かだ。 道沿いに立ち並ぶビルはどれも同じような色形で、眠ったようにひっそりと佇んでいる。 時折煌々と明かりを灯すのはコンビニや24時間営業のスーパー。歩道に人の姿はなく、ごく稀に自転車が走るのを見かける程度。車すら通らない時間は、まるで滅亡した世界に取り残されたような気持ちになりそうだ。 陽一は何を考えているのかなと、走る背中を見つめて思う。 もう30分近く走っているのに、スピードが落ちる様子はない。 毎日走り込んでいるのも頷けるほど、力強く迷いのない走りだ。 軟禁生活の鬱憤を晴らすような、がむしゃらさも感じる。 麻布十番駅のある交差点で、陽一は麻布通りを逸れた。 慌ててカーナビを確認すると、行先に芝公園という文字が見えた。 そこなら僕もわかる。東京タワーがある場所だ。陽一と一緒に麓を駆けずり回り、綺麗な夕焼けと赤い塔を見たあの日を思い出す。
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