第一章 まだ、青い

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第一章 まだ、青い

週刊連載を抱える漫画家の一日は入念なストレッチから始まる。 これから日が沈むまで、ひたすら椅子に座って絵を描くのだ。同じ姿勢で居続けるのは身体への負担が大きいから、せめて前日の疲れをほぐしてから挑まなければならない。 午前中は集中力があるので下書きや線画を進める。 ネームを考えたい時は午前のうちに散歩に出る。 お昼ご飯は決まって午後1時。母親が毎日協力してくれているから、僕は食べるという行為に意識を向けることができる。もし僕が一人暮らしをしたら、食事という工程はまず真っ先に省略されるだろう。 昼食後は頭が働かない。 だからメールをチェックしたり、関係各所へ連絡をしたりする。編集との打ち合わせもこの時間が多い。人とのコミュニケーションで脳を動かさなければついぼんやりしてしまう時間帯だ。 コーヒーでスイッチを入れたら、夕方からまたひたすら手を動かす。 カラー原稿やベタ、トーン処理など、作業工程をこの時間で進めてしまう。 夢中になって手を動かしていたら、いつの間にか夜だ。キリのいいところで階下に降りると、居間で夕飯をとる。両親と何気ない会話をしながら、テレビを眺めて世間を知る。 入浴後のラストスパートはその時々で工程を変える。 締め切り間近なら仕上げに没頭するし、ネームを練る必要があれば調べものをして、これと言って切羽詰まった工程がなければ気分でやりたいことをやる。 寝る時間はまちまちだ。 日付が変わってすぐに眠ることもあれば、3時くらいまで仕事をしていることもある。 徹夜はできるだけ避ける。稀に同業の先輩作家と話す機会があると、必ず「徹夜だけは絶対にするな」と言われるからだ。 少しでもいいから、必ず眠る。朝は必ず同じ時間に起きる。 そしてまた、入念なストレッチと共に同じ一日を始める。
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