第一章 まだ、青い

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思い立ってLINEを立ち上げる。 陽一とのトークルーム、最後の会話はふざけたスタンプの応酬だった。 なんでこの流れになったのかも思い出せないが、どうせ深い意味なんてない。 こういう気楽なやりとりができる相手がいると言うだけで、自分はまだ大丈夫だと思えるのだ。 テキストボックスを叩いて文字を打つ。ただの雑談、実のないもしもの話。 『僕が幕張メッセのステージ立つって言ったら、陽一どうする?』 だが、何故か送信ボタンを押せなかった。 感じたことのない胸騒ぎがする。連絡をすべきではない、と言う漠然とした感覚が僕を支配し始める。 普段なら何も考えずに送るような文だ。陽一は嬉々として返事を返すだろう。何も躊躇うことはないはずなのに、一体どうしたと言うのだろう。 無意識のうちに陽一のスケジュールを頭に入れていて、遠慮が働いているのだろうか。たとえば今生放送中だったりしたら、メッセージを送ったって反応があるわけがない。 そう思ってSNSを再度検索するも、日向陽一公式アカウントは二日前から更新がなかった。 SNS投稿はスタッフの手によるもので、陽一自身はSNSアカウントを持つことを禁じられている。 だから公式アカウント以外で彼の動向を確認する術はない。慣れないインスタグラムも覗いてみたが、こちらも二日前の自撮り投稿が最新だ。雑誌取材を受けたというスタッフの報告文に目を通し、すぐにウィンドウを閉じる。 気のせい、と言ってしまえばそれまでだ。 胸騒ぎを覚えるのは初めてだから、この感覚を信じていいのかわからない。 再びLINEを開いてみる。少し会話を遡ってもスッキリすることはない。
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