第六章 僕たちは恋じゃない

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京都駅のホテルで陽一に会った時も、本当は言わなきゃいけなかったのに、誕生日のお祝いムードと陽一の心情を鑑みて言えなかった。 僕は、陽一の期待する言葉を、返せない。 「……じゃあさ、もっかい言わせて。顔見てちゃんと言いたいから」 やけに広々とした十字路に出ると、陽一は足を止めてそう言った。 日中はひっきりなしに車が行き交うであろう大きな道路も、やっぱり車も人も誰もいなかった。 空が広く感じたのは、幅の広い川があるからだと気がついた。 それから、川にしては様子がおかしいなと気がついた。 岸の向こう、高くつまれた石垣を見て、やっと陽一の言ったことを理解した。 ここは日本の中心、皇居外苑。 午前2時過ぎの空には、やけに明るい満月が浮かぶ。 「俺は、望が好きだ。友達とかそう言うんじゃなくて、恋愛感情として。だから、もし叶うなら付き合いたい、と思ってる」 逃げずに僕の目を見て言う、陽一の覚悟が嬉しかった。 少し強張った表情が愛おしいと思った。 ドラマでよく見かけた愛の言葉を囁くシーンも、ご本人だとこんなにガチガチで子供っぽくなるんやなぁ。 そう言ってやりたい気持ちを飲み込んで、僕は精一杯、笑った。 「……ありがとう。僕も、陽一のことが好きやよ」 遠くから迫る車の走行音を一つ見送って、それから、陽一の目を見て続けた。 「でも、付き合うとかそういうのは、違うとおもう」
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