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「はあ……」
「こんな雪の中でボーッとしてたら風邪ひくぞ」
公園のベンチでうなだれていると、上から聞き慣れた声が降ってくる。顔を上げると、見慣れた無愛想な顔が私を見ていた。
「先輩……」
「またしょーもないことでも考えてたんだろ」
「むっ、失礼ですよ、先輩。別にしょーもないことなんて考えてません!」
べーっ、と舌を出す。全くこの鈍感男は。
「ったく、相変わらずだな」
「ふーん、先輩に言われたくありませんー!」
「……。それで、何でため息なんか吐いてたんだ?」
「……だって、もうすぐ先輩たち卒業するじゃないですか。雪って卒業までのカウントダウンを表してるみたいで、何かだんだん切なくなるんですよね」
はあ……っ、と。またため息を吐くと、周りの空気が白くなる。
「……ふーん」
「ちょっと、何ですか先輩。ふーんて」
「いや……」
「……?」
何よ、急に黙っちゃって。私別におかしなこと言ってないわよね?
「……先輩たち、ね」
「……!」
ふっと先輩が口元を緩めた。めったに見せない表情に、思わずきゅんときちゃった。って、そうじゃなくて!
「ち、違いますよ! 別に先輩たちっていうのは、千葉先輩のこと言ったわけじゃなくって!」
「何だ、そうなのか?」
緩んだ口元が、またキュッと小さく結ばれた。
「あ、えーと、だから、その、卒業する先輩たちはみんな何かしらお世話になったと思うので……、先輩も一応はそこには含まれてるっていうか……」
「……お前、フォロー下手だろ」
呆れ顔で私を見下ろす先輩。うー、またやってしまった。
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