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コンビニから公園に帰ってくると、先輩はおとなしくベンチで座って待っていた。雪が降る中で、腕を組みながら。ちょっとうとうとしてる?
私は足早に先輩に近づく。
「先輩先輩、はいどうぞ」
「……ん」
買ってきた缶コーヒーを差し出すと、先輩は素直に受け取る。目がとろんとしてる。こういうちょっとした表情に、だんだん心を奪われていった。
先輩は缶のふたを開けて一口飲んだ。
「ぶっ、お前これ無糖じゃねえか!」
「あら、間違えちゃいました。うふふ」
「てめ、わかっててやったろ……」
先輩が苦そうに缶コーヒーを握り締める。
「眠気は覚めたんですからいいでしょ。はい。こっちが微糖です」
「……いい。もったいない」
そう言って私が差し出した缶コーヒーを拒否して、そのまま無糖のコーヒーを飲む。無理しちゃって。
「先輩、無理しなくていいですよ」
「……」
飲みながら私を拗ねるようにじろっと見上げる先輩。何か、かわいい。
「……」
かわいくて、思わず抱きしめたくなるような衝動を持っていた缶コーヒーに向けて、私はまた先輩の隣に座った。
握りつぶしてしまわないうちに微糖の缶コーヒーのふたを開けて、ちょっとだけ飲む。
「……。先輩」
「何だ」
先輩をちらっと見ると、相変わらずの無愛想な顔をまっ白な地面に向けていた。
「これとそれ、交換しません?」
「……寝言は寝て言え」
先輩はぶっきらぼうに答えると、缶コーヒーをぐいっと一気に飲み干した。
「!」
直後、「ゲホゲホ」と咳き込む先輩の背中を擦る。
「ちょっとー、大丈夫ですか先輩? 一気に飲むからですよ」
先輩は「うるせえ」と一言言ったきり、ずっとそっぽを向いていた。
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