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「おい、秋野」
「へ?」
肩に軽い衝撃が走る。隣を見ると先輩の顔。高校生じゃない、成長した先輩。ああ、私また心がタイムスリップしちゃったみたい。
「お前、またしょーもないこと考えてたろ」
「ちょっ、人が思い出に浸ってるところを邪魔しておいて、しょーもないとは何ですか!」
私は抗議の声を上げると先輩は「ほれ」と缶コーヒーを私の手に持たせた。
「何ですかこれ?」
「見りゃ分かんだろ。缶コーヒーだよ」
先輩の手にも缶コーヒー。私は自分の手元を見る。無糖のコーヒーだ。先輩の手元を再度見る。しっかり微糖のコーヒーだ。
「先輩、まだ無糖飲めないんですか?」
「……」
先輩は缶コーヒーのふたを開けて一口飲んだ。
「……」
私も缶コーヒーのふたを開ける。苦そうな香りが漂う。私は無糖は平気、昔から。
ただ。
「先輩……」
「何だ」
私はちらっと先輩を見る。先輩はやっぱり無愛想な顔を灰色の机に向けている。
「これとそれ、交換しません?」
「寝言は寝て言え」
先輩は私から缶コーヒーを奪うと、ぐいっと一気に飲み干した。
先輩はまた咳き込んでいた。
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