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「どもっす」
百田の車から降りて、一応ペコッと頭を下げた。
「明日からは自力で帰れよ」
助手席側の窓を少し開けて百田が言う。
「あと、課題はちゃんと終わらせるように」
「……まぁ、やる気次第っす」
面倒臭さ全開に答えると、百田は「やれよ?」と念を押してくる。
「へーへー何とか頑張りますよっと」
車が動き出す気配がして一歩下がる。
「それから……」
「ん?」
百田の声のトーンが変わる。
「黛の事頼むな」
「は?何て?」
唐突に言われた言葉に理解が追い付かない。
逆光が眼鏡の奥の表情を読み取らせてくれない。
「お前には期待しているんだ。学校一のモテ男くん」
意味が分からず再度「は?」と繰り返す俺に構わず、百田は車を発進させた。
「ちょっ……百田っ?!待てよ!!」
いくら自慢の脚力を持っていても、走り去る車には追い付けない。
「くっそ!!」
その場に立ち尽くす俺は、脳内で百田の謎の言葉を反芻させていた。
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