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「川瀬ッ!センセイ、川瀬が」
目を開けると、佐橋が秋津が宮嶋が
俺を心配そうに見つめていた。
「‥‥あ、」
まだ実感したくなかった。
還ってきた。
地上に、彼のいない現実の世界に。
土塗れになったグリーンのポロシャツを
視界に入れながらゆっくり立ち上がると、
手を差し出してきた宮嶋の介助で山を下る。
もうここには二度と足を踏み入れない。
長く囚われ実体を失った彼を思い出すから。
涙で頬を濡らし、俺は声を上げて泣いた。
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