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1.家なき子 楓、全○の男と出逢う
「──今度は一体何なのよ。引っ越したと思ったら、火事って」
「生きてるといろんな事がある、というね」
「あり過ぎだと思うけど、楓の身辺」
火事から二日後の同時間帯、私は、とあるビジネスホテルのロビーで 人と会っていた。
会社の同期で友人でもある光華が、苦笑いしながら私を労わる。自分でもよくわかってますよ、災難続きであることくらい。
結論から言うと、三日前の火災により、
私、二川 楓は 住処を失った。
発生から約一時間半で火が消し止められたアパート火災は、電気配線のショートが原因で、建物の三分の一ほどが焼失。
火元となった101号室はほとんどが焼け落ち、その隣102号室と 真上の部屋である201号室にも燃え移り、今現在も黒焦げのむき出し状態である。
でも あの炎の勢いを目の当たりにした者としては、むしろその程度で済んだ事が奇跡のように思える。亡くなった人や怪我人が一人も出なかったことが救いだ。
生まれて初めて火事の現場に遭遇し、その恐ろしさに愕然とした。日本の消防組織は、世界一だと知った。
「しかしさあ、賃貸のアパートでもこれだけ憂鬱になっているんだから、自分の持ち家が火事になった人なんて相当大変な思いをしてると思うよ? ほんとに気の毒、悲しい……根こそぎ失くなるんだもん火事って。恐ろしいわあ」
「まあそうだろうね、地震 雷の次にくるわけだし、火事 恐いわあ……って、他人事ではないけどな?」
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