1.家なき子 楓、全◯の男と出逢う

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 光華と顔を突き合わせて話をしていたところに、もう一人の待ち人、沖津 佳(おきつ けい)がやって来た。彼もまた私の同期であり、光華の彼氏でもある。 「ごめん、遅くなった」 「お疲れさま。逆に早かったじゃない」 「沖津君まで 忙しいのにわざわざごめんね」  優秀で有能な沖津君は 若手エース社員だ。けれど全くそう見えないくらい謙虚で温厚な人柄で、同期の皆が頼りにしているところがある。  光華のことをさりげなく大切にしていて、お互いに尊重し合っている、まさに理想のカップル。先のことを見据えて、最近彼らも一緒に暮らし始めたところだった。 「災難だったな、二川」 「大変ご心配をお掛けしました」 「朝食ビュッフェが美味しくて、やつれちゃって大変なんだって」 「それは大変だな、元気そうで良かった」 「だから元気だって」 「楓、しばらくうちに泊まれば? 佳もいいよね?」 「ああ、勿論いいけど」 「いやいや、ありがたいけどさすがにそれはナシよ、二人の愛の巣に一か月もお世話になるなんて、そんな空気読めなくないから」 「誰もひと月居ろとは言ってないわ」  二日前、突然 非日常に放り込まれて、やっぱり私ちょっと、神経が昂っていたみたい。いつも通りの二人の様子を見ていたら、ホッとして、ゲラゲラ笑って、心が凪いでいく。  静かに微笑んでいた沖津君が、ところで、と、話を切り出した。 「光華、あの話は したの?」 「いや、まだしてない。だって佳、聞いてみないとわからないって言ってたじゃない」 「あそっか、聞いたらオッケーでした」 「おおっ!? ほんとに?」 「え、なになに? 何の話?」  今日二人がここに来てくれたのは、心配で様子を見に、というのもあるけれど、今後のことで相談がある、という話だった。 相談は 私が一方的に乗ってもらうだけだが、なんだろう、どんな内容かは聞いていない。  なんとなく良い話っぽいけど。 「実はさ、俺の親戚が 学生向けに貸しているマンションがあるんだよ。場所は、F町」 「F町?」  学生向けの、マンション…………ほう。 
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