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「なにその素敵な話は……F町? めっちゃいい、ありがたすぎるんだけど。だけど私、学生じゃないけど いいの?」
「ん、事情を話したら気の毒がって、直ぐにでもどうぞ空いてるから、って。住んだ分の家賃はもらうけど、敷金礼金は要らないって言ってる」
「その部屋でひと月待って、さっき楓が気に入ってた部屋に移ればいいんじゃない?」
「あ」
それは、たしかにいい。
家賃を聞いて、さらに驚嘆する。
本当に 儲けなど考えていないらしい。
「二川さえよければ 週末見に行ってみる? 週末っていうか、明日か明後日だけど。俺と光華もつき合うし」
「さすが! 頼りになります沖津様!」
願ってもない話だった。
不安な状況に突如差し込んだ、希望の光。
悪いことがあれば 良いこともある、
それが人生よ。
その日の夜は、二人に感謝しながら、
ホテルのベッドでぐっすりよく眠った。
ところが、
忘れたつもりはなかったが 忘れていた。
今年の私は 何事もスムーズにはいかない。
ことごとく、不運の連続である事を──。
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