1.家なき子 楓、全◯の男と出逢う

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「なにその素敵な話は……F町? めっちゃいい、ありがたすぎるんだけど。だけど私、学生じゃないけど いいの?」 「ん、事情を話したら気の毒がって、直ぐにでもどうぞ空いてるから、って。住んだ分の家賃はもらうけど、敷金礼金は要らないって言ってる」 「その部屋でひと月待って、さっき楓が気に入ってた部屋に移ればいいんじゃない?」 「あ」  それは、たしかにいい。  家賃を聞いて、さらに驚嘆する。  本当に 儲けなど考えていないらしい。 「二川さえよければ 週末見に行ってみる? 週末っていうか、明日か明後日だけど。俺と光華もつき合うし」 「さすが! 頼りになります沖津様!」  願ってもない話だった。  不安な状況に突如差し込んだ、希望の光。  悪いことがあれば 良いこともある、  それが人生よ。  その日の夜は、二人に感謝しながら、  ホテルのベッドでぐっすりよく眠った。  ところが、  忘れたつもりはなかったが 忘れていた。  今年の私は 何事もスムーズにはいかない。  ことごとく、不運の連続である事を──。
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