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翌日の土曜日、光華と沖津君と、そのマンションの最寄り駅で待ち合わせをして、一緒に現地へ向かうことになった。
待ち合わせの時間よりもかなり早く着いてしまった私は、駅構内から外に出て、広場のベンチに腰を下ろした。
人通りは多くもなく少なくもなく落ち着いた印象だ。子連れの若い夫婦が多い。治安がいいのかもしれない。
F町は、あまり来る機会がない、というか来た覚えがない。初めてかも。
通勤の時に毎日通過する場所ではあるが、あまり馴染みのない街だった。
駅前通りを少し行くと、規模は小さいがスーパーがあり、その先には小さな商店街も見える。テレビの街ブラ番組で紹介されそうな、活気のある商店街のようだ。
その後すぐに光華と沖津君と合流し、先程からぼんやり眺めていたその商店街の中を、ゆったりとしたスピードで進んで行く。
「ここの商店街、面白そうな店がいっぱいあるね……あ、あの甘味処良さげ」
「学生が多いから、安くて旨い店が多いよ」
「へえ、いいじゃん。ゆっくり見て回りたい。ってか楓、昼ご飯食べた? 微妙な時間だから私たち食べないで来たんだけど、匂い嗅ぐとお腹空いてくるな~」
「まだ食べてない。朝がっつり食べたから」
「ホテルのビュッフェも食べ納めね」
「12時半か……とりあえず部屋を見てからにしようか。おそらくそんなに時間はかからないだろうし」
沖津君の叔母さんを通じて、住人の方には13時頃に伺うと伝えてある。
商店街からはずれて、懐かしい雰囲気のちょっとした坂を上ると、目的のマンションが見えてきた。
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