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 私 今、大殺界なのかもしれない。  調べたことは無いけれど。  目の前で燃え盛る自宅アパートを 呆然と見つめながら、そんなことを考えていた。  今年に入ってから身の回りで起きた 不運と災いの数を数える。やはりちょっと 尋常ではない。きっとそういう年廻りに違いない。 「燃えてる……うわ……」 「下がってください、危ないので、下がって!」 「あっ、あのすみません、私 ここの住人なんですが」 「何号室の方ですか!?」 「二階です、二階の、202号室!」  小さな爆発音、ガラス戸の割れる音がして、思わず、うあっ! と声が出た。  火元となっているのは一階の角部屋のようで、その窓からは、オレンジ色の炎と黒煙が立ち込めている。ひどく焦げ臭い。    七月中旬、梅雨の終わりの頃。  帰宅ラッシュの時間帯だが、日は長く まだ空は明るかった。  このアパートに越してきて 一週間と三日。  そう、わずか十日。住み始めてまだひと月も経っていない。騒然とする中で周りを見渡しても、どの人が住人でどの人が野次馬かもわからない。  まさか、そんな、こんな事ってある!?  あるある、今まさに目の前で、そんな事が起きている。  あと一週間、引越しがずれていれば、って話? いやダメだそれでも、どちらにしても引っ越した直後に火事に見舞われることになっただろうと、ありもしないもしもの話を想像するくらい 冷静ではない。  この日本で、一日に、一年に、何件くらいの火事が発生するのだろう。 まあでも、 消防署があって消防士という職業の人たちが日々訓練に励んでいて、全国各地に消防車が何千台何万台?と配備されているのだから、火事は、めずらしいことでもなんでもないのかもしれないね………いやいや、困るって、火事?! なんで!? なんてこったい!!  鎮火するどころか、勢いよく燃え広がっていく炎を瞬きもせずに見つめながら、明日は仕事を休まなくちゃかもな、と、深い溜息を吐いた。
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