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一章 始動1話
始動 1話
『――俺が、此処にいる事は奇跡かそれとも……』
――時はAD5537年。
世界は機械化文明が進み、機械を満散させた都市を未来都市、従来の、【タイヤ】を取り入れて動く自動車がある従来都市、また、機械化文明が充分に行き届いてない所を普通の都市と呼んでいた。そんな世界の中、国は八つに分かれていた。
5515年に勃発した世界勢力戦争 (世界大戦)、後の十年大戦。
八つある国のうち、ルーンヴァレイ公国・帝国ベラス・ダルイレム国・シュンベルク国・フェインリア国の五カ国が参戦し、この十年大戦は、帝国ベラスとルーンヴァレイ公国が協定を結び、平安を取り戻すべく残りの三カ国との戦いで終戦を迎えた。
5525年に十年大戦は終戦したが、その八年後の5533年。突如発生したクリーチャー、MC (異種生命体兵器)により世界は混乱を招いた。これを期に、ある国が密かに作っていた戦争兵器クローン搭載。また科学的ウイルスによる身体能力を超越したものまで作りあげた。それを使い世界統一を目論む国も急増しはじめた。その打開策としてルーンヴァレイ公国の世界法案維持連合局、略してミッド連合は、十年大戦の際に送り出した特別防衛軍のSDを今から一年前の5536年に再結成させたのだった。
SDは少数精鋭のひとつで、主な活動は戦争の阻止、国内 (世界も含む)異変の捜査・解明で、戦闘能力は勿論、諜報に長けているものが配属されるが、大体は、ミッド連合中将、アリバ・リオン・フォードによって人選されているのが現状。そして、それを取り仕切るミッド連合とは、世界の平安と守護を掲げ、三軍 (陸軍・海軍・空軍)を持つ大企業の国軍である。
簡約すると、ミッド連合は、世界各地の内乱や戦争を同様の手段で阻止し、異変があれば捜査、解明をする――ルーンヴァレイ公国が誇る軍事企業体である。
十年大戦終結から約十二年。5537年の九月中旬。一年ほど前に再結成されたSDに、自らの運命に翻弄されながら、隊長が就任してきたのだった。
*****
『パパ (制作者)がとまっちゃった。ううん。本当は死んじゃったの。あの人が……あの人がきっとパパを殺したんだ。あたしの頭がそう言ってる。だから――あたしは逃げなきゃならない。パパの命よりも大切な、あたしを守るために。―…あたしは、逃げなくちゃならないんだ』
そこで目が覚めた。
ー…夢? にしては現実味がある。
最近こういった夢をよく見る。正夢なのか、あるいはーー
…まさか。
非現実的な考えに一笑し、俺は半身を起こす。
ベッド脇のカーテンから注ぐ陽光で朝であることが分かる。
ボンヤリした頭に克を入れるべく洗面台に向かい顔を洗った。ふと、洗面台の鏡で自分の顔を見る。
……疲労が窺える。
苦笑した。自分で言ってれば世話ないな。
暫し笑顔の練習をしていると一本のコール音。すぐさまデスクホーンの受話器を取る。
「…はい」
『お早う御座います、リース・ブランズ大尉』
受話器の先から聞こえる柔らかい声。
「…お早う御座います。ベニア・キャルバン大将補佐殿…」
『フフ。相変わらず不機嫌みたいね?』
コールの主は含み笑いをする。
そんなつもりはないが、「ご用件は何でしょうか?」と、その笑いに少々憮然としつつ低く呟いてしまった。
『ひねくれ屋さんね。ーーそうそう、大将がお呼びよ。至急、本部の第六執務室に来てくれとの事。確かに伝えたわ。じゃあ後程ね』
彼女は皮肉に笑い、用件を手早く伝えられて一方的に電話を切られた。
「……」
電話の受話器を無言で見つめ、どっちが『相変わらず』なんだよ。心中で悪態づきながら溜息をはいた。
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