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ここにはもういない人の名前だけれど、そんなにすぐに外す必要もない。
自分の表札もまだ作っていないのだから。
男のひとり暮らしということで、鍵の付け替えだって後回しにしていた。
ずっと放置されていた中古物件だ。
今更誰も来ることはないだろう。
こんなにのどかな場所は若者が暮らすには静かすぎるし、年寄が暮らすには不便すぎる。
好き好んで購入する人が現れるなんて、きっと誰も思わないだろう。
太一は不動産やから受け取っていた鍵を使って玄関を開けた。
ここ最近は太一が下見に来たり不動産業者が出入りしていたから、そのドアはスムーズに開いた。
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