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「かのこちゃんもそのうちわかるわよぉ~。離れていたって私たちは夫婦なのよぉ~」
「私は認めない! 別れてよ、疫病神!」
「まぁ~、親に向かってなんて言葉かしらね。ねぇ~、いいから、早く鍵開けてよぉ~。こぉんな雪の中、待ってたんだからぁ~」
「鍵持っていない時点で家族じゃないって、いい加減わかってくれない? 離婚してなくてもその時点でお父さんから信用されてないって事でしょ」
「な、まいきーっ。いいから早く開けなさいって!」
ドンッと衝撃を受けて、踏ん張りがきかずそのまま道路わきの雪かきでよけられた固まりへと倒れこんでしまった。とっさにまだ小さい生命が宿る膨らみを、ぎゅっと抱きしめる。
カバンの中身が、雪が溶けて濡れた路面へと飛び散った。
携帯、ハンカチ、ついさっき、もらったばかりの写真……。
「ほらぁ~。早く言う事きかないから。それじゃあ、かのこちゃんの身体が冷えちゃうわよぉ。今の時期、身体を冷やしたらダメでしょう~」
ふふんっと笑う母の顔を見て、血がのぼるのと雪に触れている部分から冷えていくのと同時に感じていた。
どうしてこの人が母なんだろう。
よその家は、みんな優しそうに見えるのに。仲良さそうにしてるのに。
この大事な時期に娘を突き飛ばすような人が、どうして母なんだろう。
こんな人の事でなんか泣くもんか。
そう思いながらも、喉から、目から、こみ上げてくるものがある。
悔しい……。
「きゃあっ‼︎」
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