無慈悲な瞳

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 今日は達也の十五回目の命日。  毎年花を買って来ていたが、今年で終わりにすることにした。 「懐かしいな、達也」  俺は、アルバムを見ながらそう呟く。  いつもは辛くてすぐ閉じてしまうが、一枚一枚を眺め思い出に浸る。  何故なら、このアルバムも今日捨てると決めたからだ。  全ては雪をこれ以上苦しめない為。  達也、お前なら分かってくれるよな?  そう思いながら次のページを捲る。  すると達也と俺と、茶髪のショートヘアにひまわりのように明るく笑う一人の女性が写っていた。 「(うみ)……」  俺は思わず、アイツの名前を呼んでしまう。  海は昔の彼女。いや、元婚約者だった女性だ。  達也の死を乗り越えるまで待っていてくれたが、結局自分だけ幸せになれないと謝り別れてもらった。  その時、海は言った。誰とも結婚しないで欲しいと。  俺はその時の約束を守り、結婚どころか彼女も作らなかった。  しかし結果、雪と内縁関係になっている。  これも、ある意味裏切り行為だよな。  海……、本当にごめんな。君が幸せに生きていてくれていることを切に願っているから……。  そう思い、次のページを捲る。  次は大学時代のサークルで行った、登山合宿の集合写真。そこには。 「雪!」  思わず叫んでしまうほど、そっくりな女性が写っていた。  これは山小屋で一緒だった、別の大学の登山サークルのメンバーと一緒に撮った写真だった。  これ、どう考えてもメンバーの一人として参加してるよな?  ……雪は、雪女ではない……?  じゃあ、何故自身を雪女だと名乗るのか? 意味が分からなかった。  俺は手がかりを見つけようと、他の写真を見ていく。すると。  海とのデート写真、達也とふざけて撮った飲みの写真、友人達とのプチ同窓会の写真にも雪は写っていた。 「どうしてだよ……?」  恐怖と共に、俺は海に別れて欲しいと頼んだ日を思い出す。
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