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「鏡に、姿が映っていない……」
「そう、悪魔の特徴。彼が呪力を持っているのは確かよ」
さすがにCGにしか見えない。けれどその映像の威力は十分だった。俺は顔を強張らせる。
「こんな映像……どうやって手に入れたんだ?」
「内緒。結構危険な方法だから、聞いたら後悔するわ」
彼女の瞳が、ますます重く沈んでいく。それでも口元には狂った笑みが垣間見える。俺は再び頭を引っ掻いた。
「捕まってるならよかったじゃないか。復讐する必要なんてないだろ」
「あるわ」
彼女は空気を叩くようにそう言った。分かってないわね、という表情だ。
「捕まってるだけで、生きてるのよ。そんなの許せるわけないでしょ」
俄に櫻木は鞄の中から複数枚の紙を取り出した。一枚目の上部には『ナマキ研究所について』とあり、箇条書きで文章が細かく書いてあった。
「これは?」
「喰が捕まってる研究所の情報。ここ、前々から違法薬物などの噂が絶えない所なの」
「闇の研究所、ってか? ……じゃあそいつらが喰を捕まえてるのは、喰の呪力を悪用するため?」
「おそらくね。どうやって喰を捕えたのかはしらないけど。まあ、警察とかに捕まってるよりは好都合で助かるわ」
「好都合……っていうのは」
「当然、殺すのに、ってことよ」
彼女はパラパラと資料を捲ると、平面図の部分を指差した。どうやらナマキ研究所とやらは、地下一階から地上五階まであるようだ。
「映像から見るに、喰がいるのは地下のこの部屋……研究室B1ー91。そして、この研究所は毎週木曜日の深夜零時から五階で重要な会議があって、どの研究員も欠席は厳禁。だから、喰のそばから人はいなくなる」
そこで言葉を切り、カップに口をつける櫻木。俺はごくりと唾を飲み込み、身をやや引いた。
「……深夜からの会議? さすがにデマだろう」
「普通の会社ならあり得ないわね。でもこの研究所の場合、話は別」
「というか……この資料も、その情報も、一体どうやって得たんだ?」
「だから内緒だってば。でも、正確性は保証する」
「……分かった、じゃあそれは信じるとして……喰ってやつは危険人物なんだろ? そいつを放置なんてあり得るのか?」
櫻木は徐に頬杖をつき、顔を傾けて俺を見つめた。芸能モデルと遜色ない顔つきと動作。改めて考えると、クラスのカースト底辺の俺が転校生ながら頂点に君臨している彼女と、放課後カフェに一緒にいるなんて信じられない。
「喰は、呪いの力さえなければ普通の少年よ。喰の能力、どんなだったか覚えてるわよね?」
「紙に言葉を書き、その紙を食べることで、自分の歯と引き換えに、紙に書いた内容の呪いをかけられる……だろ?」
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