キミのためにできること

9/9
5人が本棚に入れています
本棚に追加
/9ページ
吹雪の中、走りまわったのがたたったのだろう。 エオル先生と合流し、ソルを孤児院に送り届けた俺は、つぎの日から高熱をだして寝こんだ。 三日三晩が経過して、ようやく熱が下がった時、鏡に映る俺の髪は、元の濃い黄土色に戻っていた。 これは後から聞いた話だが、ソルは凍傷ひとつなく健康そのもので、皆驚いたらしい。 「きっと、テルースさんが魔法で癒してくれたおかげなんだと思います」 エオル先生はそう言ってくれた。  こうして魔力を取り戻したけれど、俺はレスキュー隊を辞め、実家に帰る決断を下した。 ずっと一緒にいよう。 あの雪の日の約束を果たすために。 親にも協力してもらい、週末里親を続けるかたわら、俺はソルを養子に迎える準備をすすめた。  正式に養子縁組が成立したのは、春のはじめのこと。 孤児院で俺の迎えを待っていたソルは、俺と同じ色に髪を染めていた。 「どうしてその色を選んだんだ?」 抱き上げてそう訊ねたら、ソルは耳もとでささやいた。 「だって、テルースとおそろいにしたかったんだもん」 「そうか、俺とおそろいがよかったのか」 「……うん!」 ソルがとても嬉しそうで、つられて俺も笑顔になる。 頭上では、木々の若葉が芽吹きはじめていた。 【おわり】
/9ページ

最初のコメントを投稿しよう!