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鏡に映る、不精ひげの生えた冴えない三十路男。
部屋の中は散らかり放題。
おまけに魔法も使えない。
「わかりました」と言ったはいいものの、こんな俺に里親なんてつとまるんだろうか?
漠然とした不安を解消してくれたのは、事前面談で訪れた孤児院の先生の一言だった。
「里親、と言っても、今回テルースさんにお願いするのは、週末だけの里親なんです」
「……週末だけ?」
エオル、というその若い先生は、穏やかな口調で続ける。
「はい。つまりは、孤児院以外での生活体験を目的としたショートステイです。まずは1度試しにやってみて、対象の子どもが希望すれば、毎週末継続していく形になります。もちろん、テルースさん側で受け入れが難しくなる場合には、ご申告いただければ終了となります」
週末だけの生活体験なら、まだなんとかなるかもしれない。
あの汚い部屋を、どう掃除して片付けるかは問題だけれど。
「対象の子は、もう決まっているんですか?」
「……はい」
俺たちは、子どもたちが暮らす生活スペースのそばに移動し、扉についた小さい窓ごしに中を眺める。
「部屋のすみにいる、あの子です。……名前はソルといいます」
エオル先生の示した先には、ひとり本を読む男の子。
「あれ?彼だけ、髪、染めてないんですね」
きちんと髪を染めてもらっているのだろう。
ほかの子どもたちは皆、色とりどりの髪色なのに、彼だけは真っ白なまま。
「ええ。実は、髪を染めるのを拒否し続けていまして……」
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