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キミのためにできること
腕の中でふるえる小さな身体。
しぼりだすような、精一杯の心の叫び。
あの雪の日の出来事を、俺はずっと忘れない。
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「テルース」
「……はい」
「お前にひとつ頼みたいことがある」
療養休暇中の俺に、いったい何を頼むつもりなんだ。
いぶかしむ俺に隊長が告げたのは、社会貢献活動の一環として、“色なし”の孤児の里親をやってもらえないか、という思いもよらない提案だった。
俺たちが住むエインシェントでは、誰もが魔法属性にあった髪色で生まれてくる。
大地の属性を持つ者は黄色系統。
水の属性を持つ者は青色系統。
火の属性を持つ者は赤色系統。
風の属性を持つ者は緑色系統。
だが、ごく稀にどの魔法属性も持たず、白色の髪で生まれてくる人もいる。
彼らは“色なし”と呼ばれ、皆に冷遇される存在。
魔法属性を重んじる環境ゆえ、“色なし”を恥じた親に捨てられる子どもが後をたたないと聞く。
もっとも、今の俺も似たようなものだ。
あの日を境に、髪がうすい黄土色になり、魔力を失ってしまった。
親の反対を押しきって、就職したレスキュー隊。
けれど、療養休暇をとって3ヶ月が過ぎようとしているのに、未だに髪色はうすいまま。
今の俺は、まったくの役立たず。
里親だろうがなんだろうが、何を頼むこと自体、隊長の温情だといえよう。
だから、俺が言うべきことはひとつ。
「わかりました」
……それ以外の選択肢はないんだ。
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