キミのためにできること

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キミのためにできること

腕の中でふるえる小さな身体。 しぼりだすような、精一杯の心の叫び。 あの雪の日の出来事を、俺はずっと忘れない。 ************************************************ 「テルース」 「……はい」 「お前にひとつ頼みたいことがある」 療養休暇中の俺に、いったい何を頼むつもりなんだ。 いぶかしむ俺に隊長が告げたのは、社会貢献活動の一環として、“色なし”の孤児の里親をやってもらえないか、という思いもよらない提案だった。  俺たちが住むエインシェントでは、誰もが魔法属性にあった髪色で生まれてくる。 大地の属性を持つ者は黄色系統。 水の属性を持つ者は青色系統。 火の属性を持つ者は赤色系統。 風の属性を持つ者は緑色系統。 だが、ごく稀にどの魔法属性も持たず、白色の髪で生まれてくる人もいる。 彼らは“色なし”と呼ばれ、皆に冷遇される存在。 魔法属性を重んじる環境ゆえ、“色なし”を恥じた親に捨てられる子どもが後をたたないと聞く。  もっとも、今の俺も似たようなものだ。 を境に、髪がうすい黄土色になり、魔力を失ってしまった。 親の反対を押しきって、就職したレスキュー隊。 けれど、療養休暇をとって3ヶ月が過ぎようとしているのに、未だに髪色はうすいまま。 今の俺は、まったくの役立たず。 里親だろうがなんだろうが、何を頼むこと自体、隊長の温情だといえよう。 だから、俺が言うべきことはひとつ。 「わかりました」 ……それ以外の選択肢はないんだ。
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