37/38
前へ
/310ページ
次へ
振り返るとそこには猛スピードで私目掛けて進んでくるトラックの姿。 きっと今ここで走って横に逃げたら、助かる。 早く、早く足を動かさなきゃ。 わかっているのに、足が竦んで動いてくれない。 『お前は結局誰でもいいんだな』 あぁ、なんで今こんな時に思い出すんだろう。 あの時の言葉。 違う、違うよ。 たった一言。 否定の言葉を言って、 『神山じゃなきゃ、ダメなんだよ』 たったそれだけ。それだけ言えたらなにか変わっていたのかもしれないのに。 “好き” たったその二文字が言えていたら 今も私は神山の傍に、隣に堂々といれたのかもしれないのに。
/310ページ

最初のコメントを投稿しよう!

12人が本棚に入れています
本棚に追加